シオノギ感染症研究振興財団_研究成果発表会2025_プログラム・抄録集
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公益財団法人シオノギ感染症研究振興財団 研究成果発表会2025 抄録 【【助助成成番番号号】】22002233SS005599 【演題名】新興感染症に対する防護策としてのキノリン・キナゾリン型低分子抗ウイルス薬の開発 【研究者氏名】青木 伸 【所属機関】東京理科大学薬学部生命創薬科学科 本研究の目的は、「新興感染症に対する防護策としてのキノリン・キナゾリン型低分子抗ウイルス薬の開発」であり、現在のウイルス感染症に対する低分子経口薬を開発するとともに、今後の新興感染症に対して備える薬剤群を構築する。我々は、2019年末から始まったCoronavirus Disease 2019 (COVID-19)の原因と考えられる新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対するキノリン・キナゾリン型低分子治療薬の開発を開始した。今後の新規ウイルス感染症など不測の事態に備えるため、合成した薬物群の中から、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)ウイルスやエボラウイルスなどに対する薬剤を発見することも念頭においている。 我々は、過去5年間でキノリンおよびキナゾリン骨格を有する低分子化合物を400個以上合成し、それらの抗SARS-CoV-2活性を評価した。まず抗マラリア薬であるアモジアキンに抗SARS-CoV-2活性が見出され、その誘導体がほぼ同様の強い抗SARS-CoV-2活性を有し、毒性も低減された1)。しかし、それらの化合物は薬物動態に課題があったため、様々な誘導化を行い、キノリン環をキナゾリン環へ変換した200種以上の化合物の中から、高い抗SARS-CoV-2活性の向上と毒性の低い化合物を見出した。これらの化合物は、レムデシビルやニルマトレルビルと同程度の抗SARS-CoV-2活性を有し、alpha~omicron株に対して有効である。また、上記化合物の塩酸塩は水溶性が高く、SARS-CoV-2感染モデルマウスに対して経口投与したところ、マウス肺中のウイルスRNAを減少させることがわかった。そして、本研究に関する特許を2022年に申請し、その各国移行に関して科学技術振興機構、鹿児島大学、東京理科大学から支援を受けることが決定した2)。 さらに我々は、上記の研究と並行して、long COVIDの原因の一つとして考えられるcytokine stormを抑制する低分子薬の設計と合成を行い、アモジアキン誘導体がtoll-like receptor (TLR)刺激によるマクロファージからのinterleukin-6産生を強く阻害することを報告した3)。本発表ではそれらの成果について報告する予定である。 最後に、本研究計画と実施に多大なご支援をいただいたシオノギ感染症研究振興財団に対し、心より感謝申し上げます。本当にありがとうございました。 ― 55 ―1. Aoki, S.; Tanaka, T.; Yokoi, K., et al. Chem. Pharm. Bull. 2025, 73, 355-368. 2. 馬場昌範、岡本実佳、外山政明、青木伸、田中智博、横井健汰、「抗SARS-CoV-2薬」、Publication No. WO2023/085392 (PCT/JP2022/042029), Nov. 11, 2022. 3. Takenaka, Y.; Tanaka, R.; Kitabatake, K., et al., Biol. Pharm. Bull. 2024, 47, 946-954.

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