公益財団法人シオノギ感染症研究振興財団 研究成果発表会2025 抄録 【【助助成成番番号号】】22002233SS004422 【演題名】アデノ随伴ウイルス2(AAV2)と小児重症肝炎との関連の検討 【研究者氏名】川田 潤一 【所属機関】藤田医科大学医学部小児科学 (背景)2022年4月以降、欧米諸国から原因不明の小児の重症急性肝炎の流行が報告され、アデノ随伴ウイルス2(Adeno-associated virus 2, AAV2) との関連が注目されている。AAV2のヒトへの病原性は不明であるが、AAV2とアデノウイルス(HAdAV)などの「ヘルパーウイルス」の同時感染により誘導される、AAV2の過剰増殖が重症肝炎の原因として推測されている。一方で、日本では現在まで欧米のような小児肝炎の流行はみられていない。本研究の目的は、日本の小児重症肝炎とAAV2との関連や、その病態について解析することである。 (方法・結果)共同研究機関より原因不明の小児重症肝炎症例の血液を後方視的に集積し、AAV2および HAdAVや各種ヘルペスウイルスDNAの検出をリルタイムPCR法で行った。AAV2は原因不明小児急性肝炎49例中6例から検出された(図1)。一方で、肝障害を伴わない発熱疾患等で構成された急性疾患コントロール群では、AAV2は50例中1例のみの検出であり、慢性疾患コントロール50例では1例も検出されなかった。急性肝炎の症例で検出されたAAV2 DNA量は、急性疾患コントロール群で検出された1例よりも高値であった。HAdV、EBV、CMVは一部の急性肝炎症例で高値を示したが、急性疾患コンロトール群でも同程度のウイルス量が検出された例が存在した。これらの結果より、AAV2は従来から小児肝炎の原因として知られているEBVやCMV等と比較しても、より特異的に急性肝炎症例で検出されることが示唆された。次に、複数のウイルスが検出された症例を図2に示す。急性肝炎群では8例の症例で2種類以上のウイルスが検出されたが、うち5例はAAV2と他のウイルスとの組み合わせであった。一方で、急性疾患および慢性疾患コンロール群においても、それぞれ3例、2例で複数のウイルスが同時検出されたが、検出されたウイルスのDNA量は急性肝炎症例と比較して概ね低値であった。 (考察)日本では欧米のような小児重症肝炎の流行は現在まで確認されていない。一方で、AAV2は原因不明の小児肝患者の約12%から検出され、ヘルパーウイルスであるHAdAVやHHV-6などの共感染が高頻度で観察された。これらの結果は、AAV2とヘルパーウイルスの共感染が原因と考えられる小児肝炎が、日本においても散発的に発生していたことを示唆している。さらなる病態解析のため、前方視的に収集した症例での検討や、患者検体を用いたシングルセル解析も進めている。 ― 53 ―
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