シオノギ感染症研究振興財団_研究成果発表会2025_プログラム・抄録集
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公益財団法人シオノギ感染症研究振興財団 研究成果発表会2025 抄録 【【助助成成番番号号】】22002233SS001100 【演題名】抗体医薬開発に向けた胚中心の特性利用による戦略的高機能抗SFTSウイルス中和抗体誘導法の確立 【研究者氏名】新中須 亮 【所属機関】愛媛大学学術支援センター医科学研究支援部門感染症研究支援分野 重症熱性血小板減少症候群(SFTS)は、東アジアを中心とするマダニ媒介性感染症である。国内では毎年40-100人程度感染し、25%程度が死に至っている。この感染症は年々増加傾向で、さらに今後の感染地域拡大や愛玩動物から人への感染増加なども危惧されている。予防・治療薬に関しては、特にワクチンや抗体医薬など免疫システムを利用する方法は未だ確立されていない。その原因の1つとして、SFTSウイルス中和抗体の標的抗原の存在は確認されているものの、いかなる免疫方法を用いても、高機能な中和抗体を効率的に誘導できないことが挙げられている。しかしながら、免疫応答のどのイベントが不十分かについての検証は進んでいない。私はこれまで、B細胞の基礎研究やウイルス感染症における液性免疫応答機序の研究を行ってきており、B細胞(抗体)の親和性成熟を担う器官である胚中心反応が生体防御において特に重要であることを示してきている。そうしたこれまでの知見から、SFTSウイルスに対する中和抗体の誘導効率が悪いことの原因の一つとして、胚中心反応を介した中和活性能の高い抗体の誘導が、エピトープドミナンシーや抗体フィードバックなどにより妨げられている可能性を考えている。本研究は、胚中心反応の妨げとなる負の要素を極力抑えた環境下での、SFTSウイルス中和能保持B細胞の戦略的・人為的胚中心誘導による、高機能中和抗体の効率的誘導法の確立を目的とするものであり、今回は現在までの研究成果について紹介します。 ― 47 ―

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