シオノギ感染症研究振興財団_研究成果発表会2025_プログラム・抄録集
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公益財団法人シオノギ感染症研究振興財団 研究成果発表会2025 抄録 【【助助成成番番号号】】22002233NN009999 【演題名】哺乳類体内に匹敵する肝蛭(かんてつ)幼虫のin vitro培養系の確立 ―薬剤開発のボトルネック解消を目指して― 【研究者氏名】関 まどか 【所属機関】岩手大学獣医学部獣医寄生虫学研究室 研研究究課課題題のの目目的的・・意意義義 肝蛭症は顧みられない熱帯病に分類される食品媒介性吸虫症である。人獣共通感染症でもあり、ヒトの症例は75ヵ国以上から報告され、畜産業に対する経済被害は年間32億ドルと推計されている。WHOが推奨する唯一の薬剤(トリクラベンダゾール)に対する耐性の出現に伴い、感染率が上昇しているため、新規薬剤の開発が喫緊の課題であるが、in vitro培養技術をはじめとする実験ツールの不足により研究が進んでいない。そこで本研究では、哺乳類体内での発育を再現したin vitro培養系の確立に取組んだ。これに成功すれば、候補化合物スクリーニングの信頼性が向上し、薬剤開発研究のボトルネックが解消される。 材材料料・・方方法法 本研究ではマウス由来の幼虫を用いてin vitro培養系の確立を試みた。肝蛭が摂食する赤血球の添加と、寄生性扁形動物の祖先とされるプラナリアで見出された有性化因子(SIS)の添加による効果を検討した。感染後3、7、11日齢の幼虫を50%ウシ胎児血清添加RPMI 1640培地(基本培地)で37℃、5%CO2の条件下で培養した。また、赤血球添加群、SIS添加群、3倍濃度SIS添加群を設定した。In vitro条件下での肝蛭の成長・分化・生殖は、面積の増大・頭円錐の発育・生殖器の発達で評価した。 結結果果・・考考察察 感染後7日齢と11日齢の幼虫は基本培地で100日前後生存し、面積が増大した。11日齢幼虫に赤血球を添加した結果、面積がさらに増大したが、頭円錐は発育しなかった。SISを添加した結果、赤血球添加を上回る面積の増大が認められ、頭円錐が明瞭に発育し、in vitro条件下で成長と分化の2つを達成した。一方、SIS添加の濃度依存性はなかった。また、全実験群で生殖器の完全な発達は再現できなかったが、SIS添加群では部分的な精巣の分岐が観察された(図2)。 本研究によりin vitro培養の条件検討が飛躍的に向上した。本研究成果は薬剤開発研究に応用できると期待される。また、将来的に吸虫の寄生適応のメカニズム解明に迫ることが可能になった ― 41 ―

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