シオノギ感染症研究振興財団_研究成果発表会2025_プログラム・抄録集
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― 39 ―公益財団法人シオノギ感染症研究振興財団 研究成果発表会2025□抄録 【【助助成成番番号号】】□□□□□□□□□□□□□□□□□□【演題名】生理的・病理的状態変化におけるインフルエンザウイルス受容体の変動□【研究者氏名】日尾野□隆大□【所属機関】北海道大学□□□□□□□□□□リサーチセンター□□□□インフルエンザウイルスが持つヘマグルチニン□□□□はシアル酸を末端に持つ糖鎖を特異的に認識し、株によってシアル酸α□□□ガラクトース□□□□α□□□□□□□またはシアル酸α□□□ガラクトース□□□□α□□□□□□□に対して異なる結合特異性を示す。この結合特異性はウイルスの宿主特異性を規定する主要な要因であり、そのパンデミックポテンシャルを評価する上で重要となる。糖鎖は細胞の病的な変化を鋭敏に反映するマーカーである一方で、宿主組織に分布する糖鎖についてウイルス感受性と関連付けて解析している既存の研究では、健常な個体のみを取り扱っており、疾患状態における糖鎖の変化を考慮していない。本研究では疾患状態にある動物におけるインフルエンザウイルス受容体の分布変化に着目した。□週齢の□□□□□□マウス卵白アルブミン□□□□□□□□□□□□□□□□□□を皮下投与で感作した後にネブライザーで全身曝露した。□□□に暴露したマウスではコントロールマウスと比較して肉眼的にも肺における充出血を認め、また組織学的には気管支上皮における粘膜の肥厚や気管支周囲や肺胞腔への炎症性細胞の浸潤が認められた。このマウスの組織をインフルエンザウイルスのリコンビナントヘマグルチニン□□□□□□□で染色したところ、肺胞の周囲に□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□株の□□□□□□□□α□□□□□□β□□□□□□□α□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□を認識する□□で染色されるリンパ球と考えられる細胞が浸潤していた。研究実施期間中に米国で乳牛による高病原性鳥インフルエンザウイルス感染が生じたことを受け、乳牛の乳腺組織におけるインフルエンザウイルス受容体の分布を解析した。泌乳期に該当する拡張した乳腺上皮細胞と、乾乳期に該当する退縮した乳腺上皮細胞で比較すると、高病原性鳥インフルエンザウイルスに対する受容体の分布は、泌乳期の細胞では管腔側に限局していたのに対して、退縮した乳腺上皮では細胞質全体に発現を認め、特に基底側で強い染色像が得られた。この様に細胞の生理的な変化によってもウイルス受容体の発現が変化することがわかった。以上の解析を通して本研究では、インフルエンザウイルスの受容体分布は従来考えられてきたように種に固有で不変なものではなく、個体の生理的、病的状態によってダイナミックに変化するものであることが明らかになった。□□

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