シオノギ感染症研究振興財団_研究成果発表会2025_プログラム・抄録集
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公益財団法人シオノギ感染症研究振興財団 研究成果発表会2025 抄録 【【助助成成番番号号】】22002233NN007755 【演題名】ウイルス酵素の蛍光イメージング試薬を⽤いた薬剤耐性インフルエンザウイルスの迅速検出法開発 【研究者氏名】紅林 佑希 【所属機関】静岡県立大学薬学部 インフルエンザの治療薬は複数種存在するが、その内4種はインフルエンザウイルスのシアリダーゼを阻害してウイルスの増殖を抑制する「シアリダーゼ阻害剤」である。近年、このシアリダーゼ阻害剤に対する薬剤耐性ウイルスが公衆衛生上の問題となっている。簡易で迅速な薬剤耐性インフルエンザウイルスの検出法は薬剤耐性ウイルスへ対する防疫や治療対策に貢献する技術となることが期待される。 我々はこれまでにインフルエンザウイルスシアリダーゼの活性を可視化する蛍光イメージング試薬BTP3-Neu5Acを開発し(Kurebayashi, Sci Rep. 4, 4877, 2014)、BTP3-Neu5Acとシアリダーゼ阻害剤の併用により薬剤耐性インフルエンザウイルスを選択的に蛍光イメージングする技術を報告してきた(Kurebayashi, PLoS One 11, e01564000, 2016, Kato, Kurebayashi, PLoS One 13, e0200761, 2018)。本研究では、我々が開発したウイルスシアリダーゼの蛍光可視化法を基盤として、薬剤耐性インフルエンザウイルスを簡便、迅速に検査する技術を確立することを目的に高性能蛍光イメージング試薬の開発とウイルス検出系の改良を試みた。 まずBTP3-Neu5Acの構造を改変することでインフルエンザウイルス特異的な蛍光イメージング剤の構造探索を試みた。インフルエンザウイルスシアリダーゼの構造情報を基にシアル酸構造を改変した蛍光プローブを合成した。ウイルス特異性を評価したところ、A型インフルエンザウイルス特異的な蛍光プローブ2種とA型及びB型インフルエンザウイルス特異的な蛍光プローブ1種が見つかった。また、これら蛍光プローブにより薬剤耐性インフルエンザウイルスの検出も可能なことが確認できた。 ウイルス検出系としてこれまでフィルターを使った濃縮法を報告したが、この方法ではウイルス濃度が高すぎる場合に薬剤耐性の偽陽性が見られた。そこで新たなウイルス濃縮法として磁気ビーズを用いたウイルス濃縮法を検討した。市販されている種々の磁気ビーズ上にウイルスをトラップし、磁気ビーズ上でウイルスを蛍光イメージングすることを試みた。濃度の異なるウイルスサンプルを磁気ビーズに吸着させて蛍光イメージングした結果、低濃度サンプルでは感度の向上が認められるとともに高濃度サンプルでは蛍光強度のカットオフが見られた。今後、蛍光強度の増大など蛍光プローブのさらなる改良を進め、薬剤耐性ウイルスの迅速検出法を確立していきたい。 ― 36 ―

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