シオノギ感染症研究振興財団_研究成果発表会2025_プログラム・抄録集
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公益財団法人シオノギ感染症研究振興財団 研究成果発表会2025 抄録 【【助助成成番番号号】】22002233NN004488 【演題名】ソーシャルメディアによる感染予防行動とワクチン接種忌避の関連 【研究者氏名】髙橋 宗康 【所属機関】帝京大学大学院公衆衛生学研究科 (背景)先行研究では、メディア利用がCOVID-19ワクチン接種の躊躇や人々の感染予防行動に影響を与えることが報告されている。欧米諸国における研究では、Social Networking Services(以下、SNS)や特定のテレビ番組から情報を得ることが、ワクチン接種への躊躇やリスクの高い行動の選択と関連していることが示されている。しかし、日本では2020年にいくつかの研究が行われたものの、2021年後半に実施された研究は1件のみである。本研究の目的は、2021年後半の日本において、COVID-19関連のメディア利用と感染行動リスクおよびワクチン接種の躊躇との関連を明らかにすることである。 (方法)本研究では、岩手県民を対象にオンラインによる横断調査を2回実施した(2021年2月5日〜7日、および10月1日〜3日)。最終的な分析対象者は、ワクチン接種意向群8,384人、行動リスク群8,413人であった。アウトカムとして、各個人のSARS-CoV-2感染行動リスクは、定量的評価ツール(microCOVID)を用いて算出した。ワクチン接種の意向は自己申告により評価した。COVID-19関連情報の取得に利用したメディアは、①新聞、②テレビまたはラジオ、③インターネットまたはニュースアプリ、④SNS(LINEを除く)、⑤その他、の5種類とした。加えて、年齢、性別、職業、居住自治体、COVID-19への感染リスクおよび重症化リスクに関する自己認識をアンケートにより収集した。 (結果)全体解析では、SNSの利用とワクチン接種の意向またはCOVID-19のリスク行動との間に有意な関連は認められなかった。一方、インターネットやニュースアプリの利用者は、ワクチン接種忌避の傾向が高く、ハイリスク行動はわずかに少ない傾向が見られた。年齢層別の分析では、中高年層において、ワクチン接種躊躇とインターネット・ニュースアプリの利用との間に有意な関連が認められた。SNSの利用は高齢者において有意に高かったが、若年層および中年層では有意差はなかった。行動リスクに関する解析結果は、全体解析と同様、有意な差は見られなかった。 (結語)メディア利用とCOVID-19における感染予防行動との関連を解明することは、特にヘルスコミュニケーションの観点から、将来のパンデミックへの備えとして重要である。政策立案者は、個人の属性によってメディア利用の傾向が異なることを考慮し、それぞれの属性に応じた丁寧な情報発信を行うべきである。 ― 32 ―

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