シオノギ感染症研究振興財団_研究成果発表会2025_プログラム・抄録集
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公益財団法人シオノギ感染症研究振興財団 研究成果発表会2025 抄録 【【助助成成番番号号】】22002233NN003344 【演題名】肺炎球菌表層構造合成に用いられる脂質キャリアの合成メカニズム解明と新規抗菌薬標的としての検証 【研究者氏名】田口 厚志 【所属機関】大阪大学産業科学研究所 肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)は、肺炎の原因菌として最も分離頻度が高い細菌である。近年、既存抗菌薬が効かない多剤耐性肺炎球菌の蔓延が臨床現場で大きな課題となっており、新規抗菌薬の開発が急務となっている。グラム陽性細菌である肺炎球菌は、細胞膜の外側にペプチドグリカン(細胞壁)・タイコ酸・莢膜から構成される細胞表層が存在し、細胞構造の維持や外部環境からの細胞の保護、宿主細胞への付着など様々な役割を担っている。細胞表層を構成する各種ポリマーの合成経路は抗菌薬標的として魅力的であることから、その合成メカニズムを解明することは新規感染制御戦略の確立に向けた重要なステップである。 本研究では、細胞表層ポリマーを輸送する脂質キャリアに着目し、その生成を担う脱リン酸化酵素群の解析を行った。肺炎球菌には膜内在型の脱リン酸化酵素が2つ存在するが、その詳細な機能解析についてはこれまで報告がされていなかった。そこで、これらの脱リン酸化酵素について精製条件の検討を行い、高純度のサンプルの精製に成功した。また、精製された脱リン酸化酵素を用いて反応条件の検討を行い、片方についてはカルシウム依存性を持つことを見出したほか、それぞれの酵素について活性に必要な残基群を同定した。さらに、低分子化合物ライブラリによる阻害剤の探索を行い、阻害剤候補となる化合物を同定した。本研究で得られた知見は、肺炎球菌表層合成機構の理解の深化につながるほか、新規治療法創出に向けた研究基盤の構築にも寄与する。 ― 29 ―

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