公益財団法人シオノギ感染症研究振興財団 研究成果発表会2025 抄録 ― 28 ―【【助助成成番番号号】】22002233NN003322 【演題名】呼吸器ウイルス感染症のワクチンに対する免疫応答を増強する宿主因子の探索 【研究者氏名】浦木 隆太 【所属機関】東京大学医科学研究所 【目的】 SARS-CoV-2によるパンデミックによって、呼吸器感染症に対するワクチンの重要性が再認識された。今回のパンデミックのように新興・再興ウイルス感染症が発生した場合、その病原ウイルスに対するワクチンの開発が重要であることは言うまでもないが、ワクチンそのものの効果を増強することも、予防効果や生産性を高めるうえで重要である。さまざまなストレス環境下におけるワクチン効果の検証により、ワクチン効果を増強または減弱させる宿主因子を同定し、これらの因子を標的とした免疫増強法の開発を模索することとした。 【方法】 絶食・絶水・睡眠障害のストレスモデルマウスに対し、インフルエンザウイルスpdmH1由来のヘマグルチニン(HA)蛋白質をアジュバント(poly:ICなど)とともに、2週間間隔で2回、経鼻または皮下に接種し、ワクチン効果を検証した。 【結果】 絶食・絶水または睡眠障害のストレスを与えたマウスにおいて経鼻ワクチンの効果を解析したところ、これらのマウスでは対照群と比較してワクチン接種後の抗体価が低下していた。一方、皮下ワクチンの効果は絶食ストレスを与えたマウスにおいてのみ減弱が見られた。 また、免疫応答との関連が報告されている血中一次代謝物および脂質について、ストレスを与えたマウスと対照群のマウスで比較したところ、複数の代謝物および脂質に差異が認められた。 さらに、各ストレスモデルにおいて獲得免疫誘導に関与する重要な細胞の割合に変化が見られたことから、抗原に対する免疫応答そのものが変化している可能性が示唆された。 ポスターセッションでは、絶食・絶水や睡眠障害といったストレスが、どのような作用機序によって獲得免疫応答の減弱に寄与しているのかについて議論したい。
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