シオノギ感染症研究振興財団_研究成果発表会2025_プログラム・抄録集
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公益財団法人シオノギ感染症研究振興財団 研究成果発表会2025 抄録 【【助助成成番番号号】】22002233NN002299 【演題名】Mycobacterium abscessus complex感染症治療法開発におけるHollow Fiber Infection Modelの構築と抗菌薬トリプル療法の有効性評価 【研究者氏名】榎木 裕紀 【所属機関】慶應義塾大学薬学部薬効解析学講座 【背景】肺非結核性抗酸菌 (NTM) 症は、日本において罹患率が急増している難治性の慢性呼吸器感染症である。申請者は、様々な抗菌薬に高度な自然耐性を有しており、肺NTM症の中で最も難治性である肺Mycobacterium abscessus complex (MABC) 症に着目した。これまでの検討において、申請者らはβラクタマーゼ阻害薬Nacubactamとβラクタム系抗菌薬を2剤併用するトリプル療法で、相乗効果が期待できることを見出している。しかしMABCは肺内のマクロファージに貪食され、生存・増殖することで肺NTM症の肺病変を形成する。そこで本申請ではトリプル療法の有効性についてMABC感染ヒトマクロファージを用いて有効性を評価し、さらにHollow Fiber Infection Model (HFIM) をMABC用に改良し、in vitro PK/PD解析を実施するために新たな評価系を構築することを目的とした。 【方法】MABC感染ヒトマクロファージ細胞を用いて、トリプル療法の有効性を評価した。MABC感染ヒトマクロファージ細胞を用いたHFIMによるPK/PD評価系構築のため、マクロファージ細胞株としてTHP-1細胞を用いて、M. avium (ATCC700898)を感染させ、その後の菌数を評価した。さらにこのHFIMにおける抗菌薬の薬物動態の再現性について現在のガイドラインで推奨される抗菌薬3剤 (Clarithromycin、Rifampicin、Ethambutol) を基準として評価した。 【結果】Imipenem+NacubactamにCefazoline、Cefotiam、Cefoxitin、Cefuroximeを添加すると、培養上清中の菌数が濃度依存的に有意に減少した。Amikacin、Imipenem単剤、Cefoxitin単剤よりもNacubactam存在下βラクタム系薬2剤併用は培養細胞中の菌数を有意に減少させた。THP-1細胞にM. aviumを感染後、経時的な、細胞内の生菌数、細胞外の生菌数、生存細胞数を観察した。21日間培養した結果、細胞内外の生菌数は時間とともに増加した。またこのHFIMでは良好な薬物動態を再現できた。 【結論】トリプル療法は、MABC感染ヒトマクロファージ細胞においても有効性を示すことが明らかとなった。さらにMABC感染ヒトマクロファージ細胞を用いたHFIMによる新規in vitro PK/PDモデルが構築可能であることを示した。 ― 26 ―

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