シオノギ感染症研究振興財団_研究成果発表会2025_プログラム・抄録集
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公益財団法人シオノギ感染症研究振興財団 研究成果発表会2025 抄録 【【助助成成番番号号】】22002233DD000044 【演題名】革新的配糖化技術を基盤とした肺非結核性抗酸菌症に対する新規創薬リードの創製 【研究者氏名】高橋 大介 【所属機関】慶應義塾大学理工学部 非結核性抗酸菌(NTM)の肺への感染により引き起こされる肺NTM症は、長期の治療期間を必要とし、再発も高確率で生じること、肺に病気がなく免疫力が正常な人も感染すること、及び世界中で罹患率が上昇していることから解決すべき喫緊の課題である。現在、肺NTM 症に対する代表的な治療には、マクロライド系抗生物質であるアジスロマイシン(AZM)をKey Drugとした多剤併用療法が広く利用されているが、未だ決定的な治療方法は確立していない。さらに、長期治療において薬剤耐性菌が出現しやすいことから、耐性菌にも効果を示す新たな治療薬の開発が強く求められている。そこで本研究では、肺NTM症に対する新規抗菌物質の創製を目的とし、演者らが開発してきた革新的配糖化技術であるホウ素媒介アグリコン転移(BMAD)反応1)を用いた新規アジスロマイシン誘導体の合成と抗菌活性評価を行った。 まず、AZMのC-11位に対して様々な官能基を導入することにより、薬剤耐性NTMに対しても効果が期待されるAZM誘導体ライブラリーを設計した。次に、ボロン酸触媒2を用いたAZMとドナー1とのBMAD反応を検討した結果、本反応が位置及び立体選択的に進行することを見出した。その後、シリル基の脱保護、続く種々のアセチレン化合物とのHuisgen環化反応により、良好な収率でAZM誘導体ライブラリーの合成を達成した。次に、本ライブラリーのNTMに対する抗菌活性を評価した結果、化合物3が薬剤感受性NTMのみならず薬剤耐性NTMに対しても抗菌活性を有することを明らかにし、肺NTM症に対する有望な新規リード化合物の創製に成功した2)。 参考文献 1) Review: Takahashi, D.; Toshima, K. Adv. Carbohydr. Chem. Biochem. 2022, 82, 79. 2) (a) Isozaki, Y.; Makikawa, T.; Kimura, K.; Nishihara, D.; Fujino, M.; Tanaka, Y.; Hayashi, C.; Ishizaki, Y.; Igarashi, M.; Yokoyama, T.; Toshima, K.; Takahashi, D. Science Adv. 2025, 11, eadt2352. (b) Review: Isozaki, Y.; Toshima, K.; Takahashi, D. Chem. Lett. 2025, in press. ― 13 ―

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